ピルについて
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ピルのメリット
- 避妊効果
- 月経痛の改善
- 月経量の減少
- 月経不順の改善
- 排卵痛の改善
- 月経前症候群の症状改善
- 月経移動
- 子宮内膜症進行予防
- 卵巣癌リスク低下
- 子宮体癌リスク低下
- 大腸癌リスク低下
- ニキビ改善
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ピルのデメリット
- 静脈血栓塞栓症
- 心血管障害
- 脳血管障害
- 乳癌リスク増加
- 子宮頸癌リスク増加
症状
- マイナートラブル(小さな問題)
- 頭痛
- 吐き気
- むくみ
- 不正性器出血
- 胸の張り
- ピル内服中の注意すべき症状
- 腹痛
- 胸痛
- 頭痛
- 視覚障害
- ふくらはぎ痛
注意が必要な疾患
血栓症
怖いと思われる血栓症のリスクですが、妊娠・産褥期の方がリスクは高いのでそれほど多いというわけではありません。よく言われるのは相対リスクは高いが絶対リスクは低いということです。
相対リスク内服している人は内服していない人の3倍ほど血栓リスクが高い
絶対リスクそもそも発症する人はかなり少ない
乳癌
長期服用でリスクが若干上がる可能性があると言われています。
内服中止後5年以降は有意差はないと言われています。
そもそもピルは閉経までまたは50歳までくらいの投与が目安とされており、乳癌リスクは40歳以降で上がることから問題にならないことが多いと思います。ただし、もちろんですが現在の乳癌患者は投与禁忌です。
40歳以降でピルの内服を続けている場合には乳癌検診をしっかり行うことが大切であると言えます。
子宮頸癌
長期服用でリスクが若干上がる可能性があると言われています。
内服中止後5年以降は有意差はないと言われています。
子宮頸癌はワクチンや、頸癌検診でその発症を予防できる病気ですので、ピル内服に関わらず予防に努めてほしいです。
ピルの注意事項
まず第一に最も大切なことは、ピルは持続的に内服することで効果があるため、必ず毎日飲むことが最も大切です。
誰しも人間なので飲み忘れがあることは致し方ないと思います。飲み忘れがあった時点ですぐに内服をするようにしましょう。
飲み忘れの対応の仕方
その日のうちに飲み忘れに気づいたとき
すぐに1錠内服し、翌日からいつも通り内服する。
Day1 | Day2 | Day3 | Day4 | Day5 | Day6 | Day7 |
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✕ 気づいた時点から 2錠内服 |
昨日の飲み忘れに気づいたとき
前日分を内服し、その日の分も時間通り内服し翌日からいつも通り内服する。
Day1 | Day2 | Day3 | Day4 | Day5 | Day6 | Day7 |
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✕ | 昨日の飲み忘れに 気づいた時点で内服 その日の分を内服 |
1日の飲み忘れであれば避妊効果は低下しないと言われています。
月経困難症目的であれば、1日でその効果が薄れることはありません。
飲み忘れが2日以上あいてしまったとき
2錠内服し翌日から内服開始する。避妊効果が弱まっている可能性があるため、7日間連続で内服できるまでは別の避妊方法をとる。
Day1 | Day2 | Day3 | Day4 | Day5 | Day6 | Day7 |
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✕ | ✕ | 気づいた時点から 2錠内服 |
あまりに長いこと飲み忘れた場合には、次回の生理を待ってもいいと思います。ピルの飲み始めで最も注意が必要なのは、妊娠していないということが確実である日から内服することです。そのため、月経開始後数日以内で開始するのが基本です。
飲み忘れが頻回にあったり、飲んだり飲まなかったりを繰り返していると、不正性器出血を起こしたり、排卵してしまうと避妊効果もありません。
またピルの副作用の血栓リスクも飲み始めが最も高く、3か月ほどでその割合は減弱します。飲んだり飲まなかったりを繰り返していると時間軸として血栓リスクが高い時間が長くなります。
- 内服コンプライアンス
- 処方通りに内服しないことを内服コンプライアンスが悪いと言いますが、この状況で何が問題になるかというと、妊娠に気づかない場合があるということです。
ピルを飲んでいるから大丈夫と思っており、それ以外の避妊をしていなかった。そしてたまに飲み忘れはあるが、ピルを飲んでいるので生理が来なくても普通である。しかし、実は飲み忘れがあった時に排卵しており、妊娠してしまっていて、お腹が大きくなってから気づいたという話を聞いたことがあります。
流産手術が可能なのは妊娠22週未満までと決まっており、また12週以降は中期中絶手術となり、簡単には行えなくなってきます。お母さんへの負担も大きくなり、死産届なども提出しなくてはなりません。
22週以降であった場合には流産手術もできませんので、望まない妊娠というのは社会問題になります。
オンライン診療で以前より手軽に薬を処方できるようになったと言っても、
内服コンプライアンスはしっかりと順守して頂きたい、それが当院の思いです。
ピルの禁忌と慎重投与について
慎重投与 | 禁忌 | |
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年齢 | 40歳以上 | 初経初来前 50歳以上または閉経後 |
肥満 | BMI30以上 | |
喫煙 | 喫煙者(禁忌の対象者以外) | 35歳以上で1日15本以上 |
高血圧 | 軽症の高血圧症 (収縮期血圧140以上拡張期血圧90以上) 妊娠中の高血圧の既往も含む | 重症の高血圧症 (収縮期血圧160以上拡張期血圧100以上) |
糖尿病 | 耐糖能の低下 | 血管病変を伴う糖尿病 |
妊娠 | 妊娠または妊娠している可能性 | |
産褥(非授乳) | 産後4週間以内 | |
産褥(授乳中) | 授乳中 | |
手術等 | 手術前4週間以内、術後2週以内および長期安静状態 | |
心疾患 | 心臓弁膜症、心疾患 | 肺高血圧症または心房細動を合併する心臓弁膜症、 亜急性細菌性心内膜炎の既往のある心臓弁膜症 |
肝臓・胆嚢疾患 | 肝障害、肝腫瘤、胆石症 | 重篤な肝障害、肝腫瘤 |
片頭痛 | 前兆を伴わない片頭痛 | 前兆を伴う片頭痛 |
乳腺疾患 | 乳癌の既往、乳癌の家族歴、または乳房に結節 | 現在の乳癌 |
血栓症 | 血栓症の家族歴、表在性血栓性静脈炎 | 血栓性素因、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、 肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患 またはその既往歴 |
自己免疫性疾患 | 抗リン脂質抗体症候群 | |
生殖器疾患 | 子宮頸部上皮内腫瘍(CIN) 子宮頸癌 | 診断の確定していな異常性器出血 |
その他 | ポルフィリン症 テタニー てんかん 腎疾患またはその既往歴 脂質代謝異常 炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎) 有症状で治療を必要とする子宮筋腫 | 過敏性素因 妊娠中に黄疸、持続性掻痒症または妊娠ヘルペスの既往歴 |
(日本産婦人科学会、日本産婦人科医会 編・監:産婦人科診療ガイドライン~婦人科外来編2020年度版)
上記の注意患者の抽出は問診で除外します。
ピルは避妊や、月経困難症に対する緩和効果などメリットが十分にあります。リスクを大幅に凌駕するメリットがあるため薬と呼ばれ、世に出回っているわけです。
どんな薬もメリットを享受するには、それ以外の効果があることを知らなくていけません。主な効果以外のものを副作用といい、副作用の中でも特に有害となるものリスクと呼び注意する必要があります。